延岡市谷家所蔵文化財紹介

所蔵文化財の概要

天正大判 赤紫段応龍波丸模様厚板

谷家は文政4年(西暦1821年)近江国(現滋賀県)蒲生郡日野町から延岡に移住して以降、「藤屋」の屋号で上方(現阪神地方)と海産物、林産物の交易を積極的に行い、その財政的基盤を築いた。

幕末から明治期にかけ、その経営形態は漸次所謂「寄生地主」化し、その家運は明治維新、西南戦争、大正・昭和の間歇的不況を伴う社会激動期を乗り切りつつ、かなりの消長を繰り返しながら推移してきたが、その間にも代々の当主により蒐集された生活用品を中心とした所蔵資料は、幸いにも滅失、散逸、被災等をまぬがれることができた。

しかし、今次大戦と戦後の第一次、更に第二次農地解放を含む一連の社会改革により家産の蒙った打撃は大きく、「大地主」としての谷家は、この時点で消滅したと言っても過言ではない。従って、上記資料も戦時疎開後は必要な修理等の保存対策を施されることなく、今日まで放置され、その間、劣化、腐朽が進行したものと考えられる。

平成6年3月、別途、谷家の事業法人の計画により、所蔵文物の保存場所となっていた土蔵3基が、谷家邸宅とともに解体撤去された。

本来、谷家において相伝された絵画、書跡、工芸品、生活用具等の有形民俗資料は、いつの時代でも人口の大部分を占め、歴史の真の担い手である一般民衆の生活の姿、就中、近現代における所謂「町家」の生活文化を織る上で、貴重な存在として位置づけられ得る。

この機会に、過去の情報の貴重な担い手であるこれ等文物の体系的、かつ学術的整備と保存の必要性が強く認識され、又、文物の性格や水準から鑑みて、将来起こりうる滅失や散逸を未然に防ぐこと、更に、その数量の膨大さから鑑みて、一個人の財政に依拠しては満足な科学的管理は困難であるとの事情を勘案し、ここに九州国立博物館への寄託が期待されるに至ったものである。

<九州国立博物館に対する文化財「寄託趣旨」より抜粋>




平成22年1月、谷家所蔵文化財の内、特に貴重な貨幣類、能面、能装束などおよそ約186件(8043点)が、九州国立博物館(福岡県太宰府市)に寄託されることになった。


平成26年12月、文化庁により下記の所蔵文化財は「美術品の美術館における公開の促進に関する法律」に基づき、九州では初めて「登録美術品」に登録された。
   貨 幣(7877点)
   能 面(19点)
   能装束(80点)
   楽 器(2点)



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